法  華  経


法華経の由来は、サンスクリット語のサッダルマ・プンダリーカ・ストラといいます。直訳すると『何よりも正しい、白蓮のような教え』という意味です。中国では、竺法護が『正法華経』と訳し、鳩摩羅什は『正しい』と『妙』と解釈し、『妙法蓮華経』と訳しました。他にも名僧達によって解釈が様々にあります。

法華経は紀元前後頃に西北インドで成立したと言われ、中央アジアを経由して、中国に伝えられ日本に伝えられました。日本では聖徳太子が法華経を最初に講義しと云われています。
法華経は、現在のような大部が最初から作られたのではありません。経典に使われている用語によって、作成年数の新旧を判断するそうです。


日本へ伝来したのは、538年頃であったとされ、仏教伝来のときに受け入れを巡って深刻な対立の中、仏教受け入れを進言し、その普及に大きな力を発揮した聖徳太子の著作とされる、法華義疏は、日本最初の注釈書で、これがあることによっても初の伝来が証明されるといいます。その後8世紀に到り、護国三部疏(金光明経・仁王般若経・法華経)の一つとして重視されています。



【構  成】

法華経は八巻28章から成っています。分け方は二種類あります。

『二門六段』 前14品が迹門  後14品が本門で、さらに各門で序分・正宗分・流通分に分ける
迹門は、この世に姿をもって現れた仏の教えで、釈迦が永遠の仏であるという実体を明らかにする以前の教え。
本門は、釈迦が久遠の仏であることを教え、この教えを信じ実践する者に悟りへ至らせる道が明らかになっている。

迹 門 序 分 序  品第1 法華経が説かれた場所で、その座にいた者達やこれから説かれようと
するお経が、どのようなものであるかが説かれている。
正宗分 方 便 品第2 縁起の法を説いているが、それはまだ究極の真理ではなく、仮の手段で
あり、人それぞれに救いをもたらすためであったとする。如来寿量品と
共に法華経の二大柱で、最も重要な品です。
譬 諭 品第3 現世の苦悩を説き、仏法を信じることによる救済を説く。聴衆に対して巧
みな方便を用いて、真実法である一乗の教えを明らかにし、仏の説法の
真意を喩えをもって説かれた。
【法華七譬の第一番目 三車火宅の喩え】
信 解 品第4 巧みな方便で人々を修行させ、一段づつ真理へ導き、やがて真理へと
到達させるという教え。4人の弟子は、自分達が理解した内容を喩えを
もって釈迦に述べた。【法華七譬の第二番目 長者窮子の喩え】
薬草喩品第5 たくさんの種類の草木が、それぞれ等しく成長しているように、人間もそ
れぞれの性質に応じて等しく仏の世界へ導かれるという教え。釈迦は、
一乗法の趣旨を繰り返し示された。
【法華七譬の第三番目 三草二木の喩え】
授 記 品第6 摩訶迦葉らの4人に万億の仏に仕えたのち、仏となる事ができるとであ
ろうと保証を与える。
化城喩品第7 まだ法華経を理解できない人のために過去における、仏と衆生との結び
つきにるいて説き、すべての人々は仏様の世界に生きていることを示
し、一切が平等で、成仏しないものはないことを説いている。釈迦は、重
ねて一乗法の真実性を喩えをもって明らかにされた。
【法華七譬の第四番目 化城の喩え】
五百弟子受記品第8 一乗真実の法を説いていたお釈迦様は弟子達の理解を察知し、それぞ
れに記別を授けた。500人の弟子達は、理解の内容を喩えで述べた。
【法華七譬の第五番目 衣裏繋珠の喩え】
授学無学人記品第9 修学者に贈る言葉。授学、学びを終えた者を問わず全ての者は仏とな
るという未来を予言。
阿難をはじめ、2000人の仏弟子達に名号(如来の名前)を授けた。す
ると菩提心を起こしたばかりの菩薩達が、なぜ自分達には別記を与え
られないのかと釈迦に尋ね、阿難達の過去世の修行の功徳を説いた。
流通分 法 師 品第10 法華経を聞いて喜びを感じる者は、仏になることができる。法華経は解
り難いので、この経を説くと迫害が多い為、経を広める困難さを予言し、
法華経を説くための心得を説いている。
見宝塔品第11 巨大な七宝の塔が、地から涌いて出て空中に留まり、宝塔の中には多
宝如来が座し、塔内より「釈迦の説かれた法華経は、皆これ真実なり」
と発せられた。このお経の真実はを証明する為になされたことである。
提婆達多品第12 釈迦の従兄弟で、後に教団を分裂させようとした提婆達多の名をタイト
ルにした。提婆達多と竜女の成仏が主に説かれており、過去に法華経
と縁を結んだ結果、得られたものである。
勧持品第13 釈迦の滅後、法華経を広めるのに命を惜しまない。無上の道が失われ
ることのみ惜しむと言い、法華経の流布を仏の前で誓う。
安楽行品第14 耐え忍んでいる伝道者に平安を得るための指針を示す。
【法華七喩の第六番目 髻中明珠の喩え】
本 門 序 分 従地涌出品第15 釈迦が説いている法華経の教説を聞いて、他の世界から来た菩薩達は
娑婆に留まり、自分達が法華経を説きたいと願ったが、釈迦は押し留め
娑婆世界には、役目を司る菩薩達がいると言われ、無数の大菩薩が地
上に現れ、自分が悟りを得たのちに教え導いた者たちであると言った。
弥勒菩薩が短い期間にどうやって教化したのか問いかける。
正宗分 如来寿量品第16 法華経の真髄。実在した釈迦は、仮の姿であって、自分は久遠の仏で
あると本来の姿を説く。
【法華七喩の第七番目 良医治子の喩え】
分別功徳品第17 釈迦が久遠の仏であると聞いて、それを信じ伝道する人の功徳こそ、最
上であるという教え。
流通分 随喜功徳品第18 法華経を聞き信じる者の、はかり知れない功徳について語っている。
法師功徳品第19 法華経を信じ、書写し、唱え、広める者は、すぐれた能力を持つようにな
ると教え示す。
常不軽菩薩品第20 昔、誰に対しても礼拝をし、仕打ちをされてもやめなかった。それは釈迦
の前世だと説き、衆生の成仏を願う礼拝行を説く。
如来神力品第21 釈迦は地から涌き出た菩薩達に法華経は人々の闇を滅ぼすと、宣教の
使命を与える。
嘱 累 品第22 釈迦は、求道者達に法華経を広めなさいと告げ、諸仏にそれぞれの世
界に戻るように進める。
薬王菩薩本事品第23 仏に身を捧げ、自分の体を燃やす事で世界を照らした薬王菩薩の話。
妙音菩薩品第24 34の姿に変身して、法華経信者を庇護する妙音菩薩の話。
観世音菩薩晋門品第25 観音経のこと。観音様が人々を救済する話。
陀羅尼品第26 伝道者に対して、法華経の守護神が幸福の呪文を贈る。
妙荘厳王本事品第27 バラモン教の王である父母に、二人の王子が霊力を示して、改宗させる
話。
普賢菩薩勧発品第28 普賢菩薩が現れ、どんなに悪い世の中になっても法華経を信じる者に救
いの手を差し伸べる事を釈迦に誓う。



『一経三段』 三分して序分・正宗分・流通分に分ける

序   分 序  品第1 法華経が説かれた場所で、その座にいた者達やこれから説かれようとする
お経が、どのようなものであるかが説かれている。
正 宗 分 方 便 品第2 縁起の法を説いているが、それはまだ究極の真理ではなく、仮の手段であ
り、人それぞれに救いをもたらすためであったとする。如来寿量品と共に法
華経の二大柱で、最も重要な品です。
譬 諭 品第3 現世の苦悩を説き、仏法を信じることによる救済を説く。聴衆に対して巧み
な方便を用いて真実を明らかにし、仏の説法の真意を喩えをもって説かれ
た。
信 解 品第4 巧みな方便で人々を修行させ、一段づつ真理へ導き、やがて真理へと到
達させるという教え。
薬草喩品第5 たくさんの種類の草木が、それぞれ等しく成長しているように、人間もそれ
ぞれの性質に応じて等しく仏の世界へ導かれるという教え。
授 記 品第6 摩訶迦葉らの4人に万億の仏に仕えたのち、仏となる事ができるとであ
ろうと保証を与えられる。
化城喩品第7 まだ法華経を理解できない人のために過去における、仏と衆生との結び
つきにるいて説き、すべての人々は人気様の世界に生きていることを示
し、一切が平等で、成仏しないものはないことを説いている。
五百弟子受記品第8 自分の可能性に気付き、信じることの大切さを教える。
お釈迦様は弟子達の理解を察知し、それぞれに記別を授けた。
授学無学人記品第9 修学者に贈る言葉。授学、無学を問わず全ての者は仏となるという未来
を予言。
法 師 品第10 法華経を聞いて喜びを感じる者は、仏になることができる。法華経は解
り難いので、この経を説くと迫害が多い為、経を広める困難さを予言し、
法華経を説くための心得を説いている。
見宝塔品第11 巨大な七宝の塔が、地から涌いて出て空中に留まり、宝塔の中には多
宝如来が座し、塔内より「釈迦の説かれた法華経は、皆これ真実なり」
と発せられた。このお経の真実はを証明する為になされたことである。
提婆達多品第12 釈迦の従兄弟で、後に教団を分裂させようとした提婆達多の名をタイト
ルにした。提婆達多と竜女の成仏が主に説かれており、過去に法華経
と縁を結んだ結果、得られたものである。
勧持品第13 釈迦の滅後、法華経を広めるのに命を惜しまない。無上の道が失われ
ることのみ惜しむと言い、法華経の流布を仏の前で誓う。
安楽行品第14 耐え忍んでいる伝道者に平安を得るための指針を示す。
従地涌出品第15 釈迦が説いている法華経の教説を聞いて、他の世界から来た菩薩達は
娑婆に留まり、自分達が法華経を説きたいと願ったが、釈迦は押し留め
娑婆世界には、役目を司る菩薩達がいると言われ、無数の大菩薩が地
上に現れ、自分が悟りを得たのちに教え導いた者たちであると言った。
弥勒菩薩が短い期間にどうやって教化したのか問いかける。
如来寿量品第16 法華経の真髄。実在した釈迦は、仮の姿であって、自分は久遠の仏で
あると本来の姿を説く。
分別功徳品第17 前半 釈迦が久遠の仏であると聞いて、それを信じ伝道する人の功徳こそ、最
上であるという教え。
流 通 分 分別功徳品第17 後半
随喜功徳品第18 法華経を聞き信じる者の、はかり知れない功徳について語っている。
法師功徳品第19 法華経を信じ、書写し、唱え、広める者は、すぐれた能力を持つようにな
ると教え示す。
常不軽菩薩品第20 昔、誰に対しても礼拝をし、仕打ちをされてもやめなかった。それは釈迦
の前世だと説き、衆生の成仏を願う礼拝行を説く。
如来神力品第21 釈迦は地から涌き出た菩薩達に法華経は人々の闇を滅ぼすと、宣教の
使命を与える。
嘱 累 品第22 釈迦は、求道者達に法華経を広めなさいと告げ、諸仏にそれぞれの世
界に戻るように進める。
薬王菩薩本事品第23 仏に身を捧げ、自分の体を燃やす事で世界を照らした薬王菩薩の話。
妙音菩薩品第24 34の姿に変身して、法華経信者を庇護する妙音菩薩の話。
観世音菩薩晋門品第25 観音経のこと。観音様が人々を救済する話。
陀羅尼品第26 伝道者に対して、法華経の守護神が幸福の呪文を贈る。
妙荘厳王本事品第26 バラモン教の王である父母に、二人の王子が霊力を示して、改宗させる
話。
普賢菩薩勧発品第27 普賢菩薩が現れ、どんなに悪い世の中になっても法華経を信じる者に救
いの手を差し伸べる事を釈迦に誓う。


法華経には、七つの喩え話があります。これを法華七喩(ほっけしちゆ)と言います。

【法華七喩の一番目 火宅の喩え】
ある年老いた長者がいました。この長者の家で火事が発生したが、長者の子供達は、この火宅の中にあって遊びに夢中になり、逃げようとしない。しかも家の出口は小さい出口が1つだけである。
長者は子供の身を案じて、大きな声で早く出るように呼びかけたが、子供達は遊びが面白くて振り向こうともしない。長者は子供たちを家から出さなくては死んでしまうことに間違いないので、呼んでもダメなら他の手立てを考えなければならないと考えた。そこで長者は子供達の好みに応じた車を与えることであった。長者は「早く出ておいで、日頃から欲しがっていた車をあげるよ」と呼びかけると、子供達は一斉に家から飛び出してきた。そして子供達は予期していたよりも数倍も良い車を与えた。

『長者が仏、子供達が衆生、燃えさかる家は煩悩で苦しむ世の中。それぞれの車が教えをさし、白い牛の引く車が最も勝れた教えで、全ての人が仏になれるという教え』

【法華七喩の二番目 長者窮子の喩え】
ある男が幼少の頃、父の許を離れて他国へ住み、その後諸国を放浪して衣食を得るために働き口を求めながら、旅をしていました。偶然、父の家の門に立った。
長者は片時も息子の事を忘れた事はなく、門前に立った男を見て息子であると知り、使いの者にその男を連れてくるように命じた。しかし困窮の極みに達していた息子は、大長者に雇ってもらえるわけがないと思い込んでいたため、使者に捉えられると勘違いをして、驚きのあまり悶絶した。それを見た長者は息子を自由にし、後日2日の使用人を遣わし、長者の家で一緒に働くように説得した。
このようにして20年間長者も我が子に温かい言葉を掛けながら、屋敷内のあらゆる仕事に精通するように仕向け、もうこの家を任せても大丈夫であることを見届けたとき、親子の名乗りを上げ、財産を息子に譲った。

『長者が仏、子が衆生、財が仏となれる智慧』

【法華七譬の第三番目 三草二木の喩え】
大雲が広がり、雨を降らせた。その雨は大地に等分に降り注いでいても草木はその大・中・小の器にしたがって潤いを受け、各々成長する。これを同じ仏も平等に法を説くが、法を聞く者の受け取る力によって、それぞれの領解に達する。よって仏は衆生の心欲を観じて普く法を説き、成仏に導く。

『雨が教えで、すべてに降り注ぐのは平等に教えた与えられる。草木は衆生の成長の度合いで、それぞれの人の教えを受け取る力量を表している。その力によって仏は法を説き示す。』

【法華七譬の第四番目 化城の喩え】
多くの人々が大珍宝を求めて旅をしていた。道中が長く険しいため、人々の心にこの旅を中止しようという思いが宿った。その心を見抜いたリーダーは、神通力を用いて仮の城を設け一休みさせて、疲労回復をしたのを見て、これは仮の城であったと伝え、真の目的に向かって前進しようと呼びかけた。

『宝が仏となる智慧、リーダーが仏、仏となる家を得るまで、仏が苦心を重ねて衆生を導く』

【法華七譬の第五番目 衣裏繋珠の喩え】
1人の貧しい人が、裕福な親友の家を訪ねた。親友は酒肴で持て成してくれたが、宴の途中で急な公用で外出しなければならず、親友は酔いしれている友の衣の裏に、値段のつけようもない貴重な宝珠を縫い付け、それを与えて出かけた。そのことを知らずに親友の家を出た友は、貧しい暮らしのまま年月を過ごした。後に親友と再会して、親友が貧しいままでいた友を責め、衣の裏の宝珠の事を告げ、友を喜ばせた。

『宝珠が仏となる智慧、友は仏』

【法華七喩の第六番目 髻中明珠の喩え】
転輪王は、軍隊を出して国々を征服し、その手柄に従って財産や領地などの恩賞を与えた。しかし髻の中にしまっておいた宝珠は、転輪王のシンボルなので誰にも与えない。しかし特別な功績のあった者には、これを与えるという。

『王が仏。宝珠は仏の智慧を教える法華経のこと。法華経を軽々しく説かないという喩え』

【法華七喩の第七番目 良医治子の喩え】
父の医師が旅に出ている不在中、子供達が誤って毒薬を飲み苦しんでいた。帰宅した父は、良薬を与え治療したが、失心してその薬を受け付けない子がいるのを見て、哀れに思い薬を与えたまま旅に出た。そして使いの者に父が亡くなったと告げさせた。この悲報に本心を取り戻した子供達は、薬を服用して皆、病が癒えた。これを聞いた父は帰宅し、子供達をまみえた。

『父が仏、子供達が衆生、良薬が法華経。死の知らせは涅槃を意味する。それによって教えに目覚めさせる。仏は永遠に存在するという喩え』

この喩えは、各品に載っていますので、法華経の訳を徐々に掲載していきます。



顕教は、釈迦が聴衆の理解能力に合わせて説いた教えです。仏教に別々の教えがあっても、それはあらゆる人を救うため、導くための手段であって、結局は同じ悟りに導くということです。

密教は、法身仏が説法した法で、宇宙真理そのものです。それなので法華経も法身の説法ということなのだそうです。しかし顕教とは違って、一字一字の中にあらゆる意味があります。法華経のサンスクリット語は、サッダルマ・プリンダリーカ・スートラで、空海は『サ・ダ・マ・パ・ダ・リ・カ・ス・トゥラン』の九字と理解し、この九字がこのまま胎蔵界曼荼羅の中台八葉院の大日如来と大日如来を取り囲む四仏・四菩薩の九尊を象徴する種字真言であるとしています。法華経そのものが、宇宙真理を示す大日如来を示していて、密教経典の性格を持っているということです。

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